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サバイバルヘルパー

第10章 嵐と小梅

 開いた穴に、顔を突っ込む。


『スーハースーハー』


 命を繋げた。


「婆さん!! 大丈夫かぁーっ!!」


 いかだの底から声をかける。


 強い流れに潰されそうになりながらも、俊輔はいかだにしがみつき、流れをいかだと共に合わせた。


「ぶっ……ぶはっ!! ぶぁーさぁーん!! 返事しろ!!」


 もう体力も限界に近い。


 だが、底から懸命に呼び掛ける。


「ZZZzzz……」


「マジかっ!!」


 小梅はいかだと、一体化しているようだ。


 無理に動かず、流れに身を任せている。


 こんな大降りの雨と、大荒れの波、唸る豪風の中、よく不安定ないかだの上で、眠れるものだ。


「……もう……ダメだ」


 横からの水圧に耐え、底の竹組にしがみついていた俊輔も、体力の限界にきていた。


 普通にしがみついてるだけではない。流されて、飛ばされないように大波が来るごとに、力を入れて踏ん張っていた。


 もう、ダメか……。


 腕が、もうもたない。


 嵐の中の海の猛威の恐ろしさを、身をもって感じた。


「婆さん……」



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