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サバイバルヘルパー

第10章 嵐と小梅

『ガンッ!!』


 突然、強い衝撃が全身に走る。


「っ!!」


 いかだが、なにかにぶつかった。


 俊輔の足にもなにかが当たる。


「うっ……」


 足がつく。


 強い波と風が、沖から左に流れ、岩場までいかだを押し進めていた。


 それには、底で、もがきながら体を揺らしていた俊輔の向きにも影響があった。


 知らず知らずのうちに、体が舵をとっていたのだ。


 今しかない。



 俊輔は足と手で岩にしがみついた。そして、密着しながら、幾度となく押し寄せる波の圧力に耐え、水面から出た。


 雨はまだ止まず、風はまだゴウゴウと音をたてている。


 波は、岩を叩くように迫ってくる。だが、一緒、下がっておさまる時がくる。


 そのタイミングを見て、岩場の上から、いかだに飛び乗った。


「婆さん!!」


 小梅の体を上から、全身で包むようにおさえる。


「婆さん!! 寝てんのか、失神してるのか、どっちだ!?」


「寝てるの!!」


「起きてんじゃねぇかっ!!」


 いつもの二人のやり取りだ。


 俊輔はうつぶせになっている、小梅の背中を抱いた。


「バカヤローっ!! なに、むちゃしてんだ!! 言ってるだろ、勝手な行動するなって……婆さんさ……死んだらどうすんだよ……死んだら……死んだら……」



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