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サバイバルヘルパー

第10章 嵐と小梅

「ごめんなさい……俊輔さん」


「っ!!」


 戻っている。


「婆さん、まだ助かってないぞ……俺を信じろ、俺を信じろ!! 言っただろ、この島にいる以上、絶対にあんたを死なせないからなぁーーっ!!」


 周りを確かめる。後ろに、バケツを拾った小さな港の船着き場がある。


 だが、また岩場から離されて、どんどん沖に進みつつある。


 飛び込んで泳ぐ気力なんて、もうない。


 それに、小梅もいる。


 一緒に飛び込むことなんて、とうてい出来ない。


「あそこまで行けたら……」


 こんな嵐の中、まだ不安定ないかだが、もつわけがない。


 このままだと、波風にやられて、バラバラになってしまう。


『バタバタバタバタ』


 なんの音だ?


 なにか、大きなものがなびくような音がした。


 俊輔は風に煽られながらも、三角屋根を掴み、立ち上がった。


「えっ!!」


 いかだの端に、白い帆がたててある。


「えっ!! 俺、作ったっけ?」


 そんな記憶はない。


 だが、思いもしなかったサプライズ。


 三角屋根に身を乗り出し、帆の向きを変えた。


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