無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「婆さん、今のうちだ!!　この岩場に移れっ!!」


　小梅は四つん這いになりながら、方向を変える。


　風と波が、いかだを揺らし、小梅の上陸を邪魔をする。


「あ〜あ〜あ〜あ〜」


「早く!!　俺の腕も限界なんだよ!!」


　ロープで締め付けられているせいか、血が止まって腕が赤くなってくる。


　ヨタヨタとしながら小梅は移動するが、いかだと岩場をうまくわたれない。


　雨にさらされ、グショグショになりながら、懸命に降りようとするが、揺れるいかだの上では、安定せずに、どう移動していいのかわからない。


　俊輔がロープでいかだをささえながら、片方の手を伸ばす。


「俺の腕がヤバいんだっ!!　怖がるなっ!!　早く移れ!!」


　怖くて出来ない。落ちたら大変なことになると、俊輔が伸ばした手を掴もうとしない。


「怖いのよ……そっちに行けないのよ……」


「俺を信じろ!!　腕が……ちぎれる……」


「あ〜〜、あぁ〜〜、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


　小梅は大声で泣き出した。


「くそがぁーっ!!」


　俊輔はいかだに飛び乗った。