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サバイバルヘルパー

第13章 新事実

「実は、この家は島の長の家だったの。それを私が家賃を払って借りていたのです」


「でも、長って人のでしょ? 旅館の旦那とどう関係あるの?」


「長と、旅館の経営者は実の兄弟です」


「兄弟!?」


「はい、島の長を決める選挙で、お兄さんが当選したんです」


「つまり、長ってのも旅館の息子だったってこと?」


「はい」


 俊輔は頭に略図を描いた。


 久美子はチラッと小幸を見る。小幸はうつむいたままだ。


「そして、この二人がリゾート計画に立ち上がって、住民達に金を渡して本土に渡るようにしむけました。反対側の私達は意地でも動くつもりは、ありませんでした」


「そりゃ、自分の故郷だしな」


「それだけではありません。ここは昔、石や岩ばかりがゴロゴロしている、なにもない島だったんです。その島を自然豊かな島にしようと、先人が一生懸命に土を運び、緑を植え、種をまき、そして、木々や草は花を咲かせ、実をつけ、また種を増やし、鳥や動物を集め、虫も、ここで繁殖するようになりました。これだけの大自然を作り上げたのです。その苦労を無駄にはしたくありません」


 島を愛する者の、心の叫びだった。



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