テキストサイズ

サバイバルヘルパー

第14章 帰ろう

「あの、ひとつ、私の口から申したいことがございます」


 久美子は少しうつむきながら言った。


 小幸はハンカチで口を押さえている。


「私……人を殺しました」


 打ち明けた。30年以上、隠し通し、島に潜むように暮らしていた久美子の口から、二人の殺害の話が出た。


「……久美子さん」


 俊輔はただ茫然と見ていることしか、出来なかった。


 久美子は昨日、俊輔に話した内容と同じことを、すべて話した。


 そのたんたんと語る姿には、もう迷いは見えなかった。


「なるほど、話はわかりました。とりあえず、まだまだ詳しい話をうかがって、実際に遺体を確認して、その遺体が殺害された者だと断定した上で、逮捕状を出させてもらいます。相当前の話なんで、少し時間がかかるかと思います」


 久美子の表情も、長い間の呪縛から解き放たれたような、清々しい表情に変わっていた。


「これで、よかったのよ」


 俊輔には、そう言ったように聞こえた。


 船内からの無線により、もう一隻の船が来た。


 俊輔はその船に乗せられた。


 久美子と小幸に、別れの言葉を交わすことなく……。


 事実を確認するべく、久美子は海上保安庁の警官と、遺体確認と現場検証を共にした。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ