テキストサイズ

サバイバルヘルパー

第4章 小梅の本気惚け

「待て待て……いたよな。いたよな。魚だよな」


 間近で見た獲物に、ゴム手袋の驚きも忘れていた。


 持ってきたバッグの中を開けてみた。


「おっ!!」


 網と釣り針。


 釣ってくれと語りかけてくるように、折り畳まれてふくらんだ、ビニールシートの端から、その姿をのぞかせていた。


 俊輔は、網に絡まった糸と釣り針を出した。


 太陽はオレンジ色に変わりつつある。


 目を凝らし、指先に集中し、糸をほどく。


 細かい結び目は針の先を使い、細かく細かく解いていく。


 自然と背中が丸くなり、肩が上がり、首をすぼめてしまう。


 木陰が青みがかってくる。


 明るい場所に移動する。


「くっそ、イライラするな……ある程度の長さがほしいんだよ。なんでこんなガッチリなんだよ」 


 また、日がかけてくる。


 糸の絡まりのトラップは、大きなものに突入した。


 結び目を中心に、3つの輪っかができ、そのうち1つが網に絡まっていた。


「これ、キツいな……」


 目が疲れてくる。眉間をよせ、ミクロの難解パズルを解くように、指先を動かす。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ