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サバイバルヘルパー

第4章 小梅の本気惚け

 ある部分だけ、分厚い板がはまっている。


 その板の手前には、先ほど俊輔が立っていた窪み。


 俊輔は金網をこえ、その板を引っ張った。


「ふんっ!! ふんんっ!!」


 背中に力を入れる。栄養ドリンクのようにファイト一発風に力をこめる。


『バキバキバキッ!!』


「うわぁっ!!」



 音と同時に金網にぶつかった。


 板が、折れた。いや、折れたというより、ちぎれたと言った方が正解かもしれない。


 よほどしっかりとはまっていたのか、水に浸かっていた部分が腐っており、引っ張った拍子に破れたように真っ二つになった。


「ええ……全部はぬけなかったか」


 この板は溜め池の水を塞き止めるためのものだ。


 この板を抜いて、その水が管を通り、用水路をめぐり田んぼに流れる。


 おそらく、かなり長い間、使われていなかったのだろう。板も古くなり、雨などで、水かさが増えれば、そこから漏れだし、少しずつ土を削り、そこだけ窪みになる。


 削られた土は流れ、用水路を埋めていく。


 ……と、俊輔は想定した。


 だが、板は折れたものの、そこから水が漏れ出している様子がない。


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