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sugar-holic

第17章 思い出してしまうから

「モカがお好きなのかと思ってました」

「ん?」

「コーヒー。以前、会社でお出ししたとき」

「ああ」

浅野さんは思い出したようで

「あのときも言ったかも知れないけど、別にこだわりはないんだ。」

「そうなんですか?」

「これは確か…誰かの引き出物だったかな」

コーヒーを一口飲むと

「昨日の高橋くんの話を思い出して、沸騰したお湯で淹れてみたけど…あんまり違いが分からないな」

首をかしげているから、私もつられて笑いを浮かべた。

「美味しいですよ?酸味の強い品種なのかなって思いましたけど」

「そう?だったらよかった」

ふふっと笑いを浮かべると、

「でも、まさかあの店に梢さんがいるとはね」

「あ…私も驚きました」

「居合わせて良かった」

不意に真顔で見つめるから、私もカップをテーブルに置いて浅野さんを見た。

「あんなになるまで飲むなんて…危ないよ。もっと気を付けた方がいい」

その言葉に、項垂れるしかなかった。

「…はい。申し訳ありません…」

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