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sugar-holic

第22章 契約して下さい

「え!?」

ノックしてくる人なんて、一人しかいない。

でも…何で!?

ドアを開ければ…やっぱり。

「何?どうかしたの?」

「差し入れです」

缶ビールと水のペットボトルを渡された。

「ありがとう…どうして?」

「自分の買ったついでです」

…こういう、さりげない優しさが、女の子に人気な理由なんだろうな。

頬を綻ばせると、倉田くんが首を傾げた。

「眠れそうですか?」

倉田くんの声に、微笑みが凍りついた。

「何言って…」

「愚痴ることで気が晴れて寝れるなら、聞いてあげますけど?」

倉田くんを見上げると、私を見たまま、部屋のドアに手をかけた。

小気味いい音をたてて、ドアが開いていく。

…ずるい。

「ちゃんと寝てもらわないと、明日の仕事に差し支えますからね」

口ではそんな憎まれ口を叩くのに。

何でそんな優しい目で見るのよ!?

「入っていいですか?」

その問いに返事はせず、倉田くんに背を向けて3歩歩いたところで

カチャ…

秘めやかな音で、ドアが閉まった。

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