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sugar-holic

第22章 契約して下さい

二つ並んだ空き缶の水滴が、サイドボードにうっすらと跡を残しだした。

「それに、まだ岐阜でやりたいことあるし。遠距離なんて無理だし」

わざと明るい声でおどけるように話すと

「そうですか?平谷サンなんか、続いてるみたいですけど?」

平谷次長、か。

だって、あれだけ惚気てるんだもんね。

そりゃあ、続くんじゃないの!?

「強司に無理だって言われたんだよね」

つい口から飛び出した言葉は、あまりに悲しい言葉で。

言ってから後悔した。

何でこんな事、倉田くんに話しちゃったんだろう。

笑いを浮かべていたはずの顔が、強張っていくのが分かる。

「…だから別れたんですか?」

静かに訊ねてくる声が優しく感じられた。

茶化す訳でもなく、ちゃんと聞いてくれた事に、気持ちが軽くなっていく。

「それもあるけど、それだけじゃないけどね」

自分でも意外に思うほど、素直に答えられた。

転勤は良いきっかけだったんだ。

もし転勤しなかったとしても、いつかは何かで破綻したんだろうって思うから…。

別れたことに後悔なんてしない。

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