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sugar-holic

第29章 思い出の味

いつもなら閉まっているスーパーで、強司と買い物をしている。

普段ならあり得ないシチュエーションに、何でか笑いがこみ上げてきた。

「こうやってよく買い物したよね」

「あー、荷物持ちな」

「ひどくない?強司だって楽しそうだったじゃない」

「まぁ…じゃなけりゃ、ついてなんか行かないわな」

素直じゃないんだから。

ふぅ、とため息をついて、玉ねぎをカートに入れた。

「それにしても、何で親子丼?」

強司の頼み。

それは以前強司に作ってあげた事のある、親子丼の作り方を教えて欲しいって事だった。

「わざわざ私に聞かなくても、ネットでレシピ調べるとか、食べに行くとか出来そうなのに」

卵をカートに入れると、強司が口を曲げて

「何かさ、どんな店で食べても何か違うんだよな」

「そんなもんかなぁ?」

別に特別なものは入れてないんだけどな。

「梢の親子丼がいいんだよ」

「…そうなの?」

軽く答えてカートを押しながら、口元がにやけてるのが分かった。

やだ。何か嬉しい。

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