テキストサイズ

sugar-holic

第29章 思い出の味

強司が玉ねぎと鶏肉を不器用な切り方でさばいている。

この様子なら、普段から自炊してる感じはしないな。

「ねぇ、台所…」

言いかけて、倉田くんの言葉を思い出した。

『…めんどくせぇ。一言、彼女出来た?って聞けばいいじゃないですか』

分かってます!!聞けるものなら聞きますよ!!

「ん?」

「あ…何でもない」

だけどね、『彼女出来た?』なんて、未練がましい事、言いたくないんだよ!!

材料を切り終わって、次は鍋で出汁をとる。

私の言う通りに出汁をとっている姿を見て、ある思いが湧いてきた。

「ねぇ、強司」

「あ?何だよ」

「これ、誰に食べさせたいの?」

その問いに、強司は私の顔を見返し…

その表情で、思いが確信に変わった。

「彼女?」

「何で…」

言い淀んだ言葉の続きは何だろう?

『分かったんだ?』かな?

分かるよ。

2年も付き合ったんだから。

「やっぱり」

ニヤリと笑って見せると、強司ははぁ、とため息をついた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ