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sugar-holic

第30章 鈍いにも程がある《倉田side》

外回りから戻って来ると、就業時間はとっくに過ぎていた。

残っている社員もまばらといった中で、つい目があの人の姿を探してしまう。

きれいに片付けられた机。

珍しい。もう帰ったのか。

「梢ちゃんなら定時で帰ったよ?」

急に真後ろから声をかけられて、驚いて振り返ると

「そんな気になる?」

ニヤニヤ笑いながら俺を見上げる比呂子さんがいた。

「打ち合わせの報告がしたかったんですけどね」

すっとぼけていると

「昼間に訪ねてきた人?あの人と会うみたい」

「へぇ。そうなんだ」

そんなこと言われても。

自分の机を見れば、伝言メモが貼ってあった。

『お疲れ様です。数量確認済み。先方より次回発送分で調整するとの報告がありました』

メモの下に納品書が挟んである。

「忙しいのに…」

ここまできちっと仕事しなくても。

少しは頼ってくれれば、可愛いげがあるのにな。

「そうなのよね。忙しくて困るよね」

見れば、比呂子さんがうんうんと頷いていた。

いや、あんたの言ってる意味と俺のとは違うから。

比呂子さんが俺を見て、ニッと笑った。

「ちょっと頼まれてくれない?」

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