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sugar-holic

第30章 鈍いにも程がある《倉田side》

それにしても。

右手に持ったクリアファイルで軽く扇ぐと、はぁ…とため息をついた。

何でこうなるかな?

俺の目の前にそびえる建物は、あの人のアパート。

『これ、急ぎの書類なのよ。目を通してもらって、週明け一番に決済欲しいの』

比呂子さんがそう言って、書類をちらつかせた時、嫌な予感がしたんだ。

『悪いけど、梢ちゃんちに持ってってくんない?』

断ろうとしたのに、俺が口を開く前に

『梢ちゃんち、知ってるでしょ!?泊まりに行ったんだから』

ギクリと心臓が跳ね上がった。

そんな俺の様子に、比呂子さんは目を細くして

『早いところ承諾しないと、何言い出すか分からないよ!?』

脅迫めいた事を言って来やがった!!

もう一度ため息をつくと、建物を見上げた。

あの人の部屋…灯りが付いてる。

帰ってきたのか、それとも『ツヨシ』と一緒なのか。

もし一緒なら…。

書類を手渡して速やかに帰るだけだ。

首を振って小さく息を吐くと、入り口に向かった。

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