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遠い約束

第1章  序〜喫茶室の情景 (一)


お待たせいたしました、と紅茶が運ばれふたりのテーブルに芳香が漂う。

さり気なく冬吾が滑らせたシュガーポットから、ひとすくい砂糖をカップに落とす。

さらさらと零れる様は、まるで指から擦り抜ける時間のようだと冴子は思う。

「時間のようですね」
「えっ?!」

心の中を言い当てられたかと目を見張る冴子に
「いや、砂糖が零れて溶けて、消える様子がそんな風に見えたんですよ」

そう冬吾は言いながらカップを傾ける。



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