遠い約束
第7章 喫茶室の情景〜遠い約束
思わず口をついて出た言葉に
一番驚いたのは冴子本人であったろう。
慌てて瞬きを繰り返しながら冴子は言葉を探す。
「覚えてらっしゃる?あれは私が六つぐらいだったかしら。
蓮の実を採ろうとして冬吾さんが池に落ちたこと…」
「忘れもしませんよ。」
冴子にせがまれ大きな実を採ろうと手を伸ばした時、頭から池に落ちたのだった。
幸いすぐに手摺りに手を掛け上がることが出来たので水も飲まずに済んだ。
「でもそれより驚いたのは冴さんが泣きだしてしまったことでしたよ」
転んでも、近所の男の子にいたずらを仕掛けられても泣いたことのない冴子なので冬吾は面食らったのだ。