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遠い約束

第7章  喫茶室の情景〜遠い約束


「私…ひどく驚いたし、もし冬吾さんが沈んだままだったらと思うと怖くてたまらなかったんです」

「水から上がった後も、公園の水道で体を流してから乾かしてる時も、泣き通しだったからどうしようかと思いましたよ」


二人の胸に黄昏が近づく中泣きじゃくる幼い冴子と一心に宥める冬吾の姿が浮かぶ。


「あの後冬吾さんは私をおぶって帰ってくれました」
「そう…夕焼けが綺麗だった」

冬吾の首に回された冴子の細い腕のぬくもりは今も消えることはなかった。


「あの日のように、二人で歩いてゆく道…は、なかったのでしょうか
ひとつの道を、離れることなく、ずっと一緒に……」

冴子の小さな声は震えて冬吾の胸をしめつける。



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