遠い約束
第7章 喫茶室の情景〜遠い約束
窓の外は静かな夕暮れを迎えていた。
「私の結婚が決まったとき、冬吾さんのお家へ行ったのです。
門の前を何度も行きつ戻りつして…
会えるはずもないけれど
もしかしたら、そう思って…
でも時間ばかりが過ぎて…
会いたかった、会って結婚なんてするなと言ってほしかった
私をつかまえていてほしかった…!」
初めて冴子は、心の内を解き放った。
涙が溢れて頬を伝い襟元へ流れてゆく。
「……そうできなかったことを、私は…一生の悔いとしています」
血が滲むほどに振り絞った冬吾の言葉が、冴子の過ぎた時間のすべてを包む。
そして静かに染み入るように
ふたりの心に鍵をかけてゆく…