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遠い約束

第7章  喫茶室の情景〜遠い約束


押し殺してもなお零れる冴子の嗚咽が、いつまでも冬吾の胸を濡らし続ける

空が朱に染まった…


「覚えていらっしゃる?蓮の花…咲くときの音を一緒に聞こうって約束したこと」
涙を拭った頬に夕空を映し冴子は濡れた声のまま尋ねる。

「勿論ですよ。そう約束したら冴さんは泣き止んだのだから…」

冴子の細い小指との指切りを冬吾は思い出して言った。

「いつか行きましょうね」

いつか、などという日が来ないことはよくわかっていた。
判りながらも冴子はそう言わずにはいられなかった。

「ええ…いつか」
必ず、と言い掛けた言葉を飲み込みながら冬吾も答える。

それは祈りのような遠い約束だった。



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