遠い約束
第7章 喫茶室の情景〜遠い約束
互いの姿を映す瞳をそっと逸らしながら冴子は席を立つ。
「そろそろ参ります、みつさんが待っている頃ですから」
「送りましょう」
「いいえ、どうかここで…」
冴子の強い言葉に押されるように冬吾も頷きながら立ち上がる。
語る言葉、残す言葉は尽きることはないが…
「……ごきげんよう」
「…冴さんも、お元気で」
冴子は瞬時冬吾の目を見つめ、やがてやや俯くように背を向けるとドアへと歩きだす。
ありがとうございました、店員の声に肩が束の間震え足が止まる…が、振り返ることはなかった。
そのうす紫の後ろ姿を冬吾はただ見つめ続けた…