誰かお願いつかまえて
第1章 私ってやつは
「―おい、幸村(ユキムラ)!お前、なんで片づけ始めてんだよ!さっき言った明日までの資料!終わらせてから帰れ!
」
バン!
『はい、これ』
うるさく騒ぐ同僚の机に資料を叩きつけて帰り支度を進める。
「これ…もう終わってんのかよ!締め切り早くなるって言ったの1時間前だぞ?!」
『あーもういちいちうるさい!私はどっかの誰かと違って有能ですのでこれくらいわけないんですー』
べーっと舌を出してバカにしてやると悔しそうに睨んでくる。
「川端(カワバタ)。幸村は以前からその資料まとめてたんだよ。お前が仕事できないわけじゃないんだから落ち込むな。幸村もあんまり川端のこといじめるなよー」
睨み合いの仲裁をしたのは上司の岡崎(オカザキ)さんだ。いつもニコニコ笑っている人。
『はーい』
「だって俺らは残業なのに幸村だけ帰るってずるいと思いません?」
まだ文句を言ってるうるさい同僚は川端。岡崎さんは笑顔を崩さずフォローしてくれる。
「今日くらいいいだろう?――同窓会だっけ?」
『はい!…それじゃお先に失礼します!』
「楽しんでこいよーお疲れー」
岡崎さんの声を背に急ぎ足で出口に向かう。