誰かお願いつかまえて
第8章 持つべきものは………
「俺、幸村から離しておくように言ったんですけど」
にも関わらず俺が来たときには、杉下さんが幸村の背中を撫でていた。
ジロっと睨むと柚原さんは悪びれた様子もなく、また笑った。
「ごめんなさいって!そんなに睨まないでよー!
あんたがどれだけナミに本気か、見たかっただけなんだから……
私が遼に頼んだの!」
本気かって………
そんなの試されるまでもない!!
「でも……私が思ってたより、あんたは本気だったわ。
ナミが会社の話を楽しそうにするのがわかった気がする…」
幸村が、会社の話を?しかも楽しそうに?
幸村は周りからの当たりも強いし、仕事量だって半端じゃない。
決して楽しいもんじゃないと思ってたけどな……
『…ふぅ、ん……』
吐息を漏らした幸村が俺の服の袖を掴んでいた。
「まったく……帰りたいみたいだから連れていってあげて。
…手出ししたら許さないから」
声だけでなく目つきも、最後の一言だけ人が変わったようだった柚原さんを諌めてくれたのは、杉下さんだった。
「面倒かけるけど幸村のこと、よろしく頼む。
コイツ男勝りですぐ強がるけどさ、今回のことはなかなか1人で抱えきれないと思うからさ」
…今回の、こと?