誰かお願いつかまえて
第1章 私ってやつは
分かってたでしょう?
ほんとは気づいていたでしょう?
彼女の存在も
大地が私にその気がないことも
『だったらなんで私の事送ったの…………』
タクシーに乗せてくれるだけでよかったのに
一緒に降りて
部屋にまで上がって
私に期待させたかった?
『はぁ…』
気づいたらシーツが涙で湿っていた。
『大体泣くほど好きじゃないくせに、なにやってんだろ…』
元はといえば中学生の恋だ。もうとっくに終わってる。
誰とも付き合ってこなかったけど、ずっと大地のことを想っていたわけじゃない。
未だ誰とも付き合ったことがないから焦っていただけだ。
『…もう考えんのやめよ』
"恋愛対象として見れないわ"
"安心させたくて"
もうしばらくは忘れられそうにない大地の声。
『私はっ!あんたの親じゃないっ!!!
私だって恋したい!!
愛したいし愛されたい!!
私だって………』
もう誰もいないのに怒鳴りつけるように叫んでしまった自分に嫌悪感でいっぱいになる。
『もう、ほんと嫌い』
私はいつだってそうだ。
愛したいし愛されたい。
だけど、自分のことは好きになれない。
前向きに考えられるときはまだマシだけど
自分のことが信じられないし
好きになれない。
自信なんて持てるはずもない。
―――そのまま私は眠りに落ちた。