誰かお願いつかまえて
第9章 女たちの戦い
『あの、岡崎さ――』
「全く……だいたいお前は人を頼らなすぎるんだ。
ちゃんと頼れって、前に言っただろう?」
前にって、いつそんなこと言われたっけ?
「……幸村、その顔は忘れたってことだな?」
ミラーで私の顔を見た岡崎さんは、ため息をついてから車を道路の端に寄せる。
「おい、川端!運転代われ」
「はい?嫌ですけど?」
「じゃあ幸村が前に来い!」
『…はい』
岡崎さんの勢いにのせられて、私は一旦車を降りてから助手席に座った。
(急にどうしたの……?)
「髪」
「『?』」
いきなりどうしたの?
私も川端もわけが分からなかった。
「パン」
「『?』」
「お化け屋敷」
「?」
『~っ!』
…思いだした!あの醜態を晒した日!!
あの日、キスされる前にそうやって言われた!!
「キ―」
『思い出しましたから!!』
次に言われる言葉が分かって、私は思わず身を乗り出して岡崎さんの口を両手で塞いだ。
満足そうに笑った岡崎さんは私の手をやんわり退けて、シートに座らせた。
『…ずるいです』
(川端もいるのにキスのことなんて///……って、川端も知ってたんだっけ…)
「分かった分かった…………さ、ベルトしたら行くぞ?」
私の頭をまたポンポンして岡崎さんはハンドルを握った。
その笑顔はやっぱり "いつも通り" で、彼にとっては何でもないことなんだろう。