誰かお願いつかまえて
第2章 仕事人間
『失礼します』
私が企画部に行くと女の子たちがびっくりして寄ってくる。
「幸村さん!
これ、南(ミナミ)さんに頼んだのに…申し訳ありません」
―南、というのは可愛い後輩ちゃんの名字。
謝ってきた女の子は私が岡崎さんや川端と組んでるのを知ってるから丁寧に話すんだろう。
2人に悪い評価をされたくないから。
「由真(ユマ)!なんで幸村さんに手伝わせるの!?幸村さんは由真と違って忙しいのに!」
「急ぎとは言ったけどわざわざ人の手を煩わせるのってどうなの?!」
今度は別の子たちがきつい口調で責める。
どうやら南ちゃんの同期らしいこの子たちは私に媚を売っておけばいいと思っているらしい。
そんなことしてもなんの得にもならないんだけどね。
「ご、ごめん…」
『南ちゃんに1人にこんな大荷物を急ぎで運ばせるのは無理だよ』
私がかぶせるようにそう言うと、俯く南ちゃんが驚いたように顔を上げる。
『私と違って南ちゃんは、か弱い女の子なんだから。そんなに急ぎだったならウチの男ども使えばよかったのに…』
「そ、そんな!岡崎さんや川端さんの手を煩わせるわけには!!」
『ちなみに南ちゃんは私や川端なんかよりよっぽど忙しいから暇人扱いしないでね?
あなた達なんかよりよっぽど有能だから南ちゃんは忙しいの』
呆気にとられる女の子たちをそのままに私は南ちゃんの腕を引く。
『南ちゃん、行くよ?
――何してんの?急ぎなら早く取りかかれば?』
私の声に怯えたようにビクッとして彼女達は作業を始めた。