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桜並木を見おろして【ARS・O】

第1章 個展

「じゃあ、私はこれで…。」

私は大野さんに礼を言って帰ろうとした。

「あ、ごめん。ちょっと待っててくんねぇかな。急ぐ?」

「いえ…」

私は首を横に振った。

その様子を高校生の女の子が見ていた。

「おーちゃん、その女の人って、おーちゃんの彼女?」

女の子は冷やかし顔で聞いてきた。

「ば、馬鹿!違うよ!」

大野さんは真っ赤になって言った。

「本当…?」

女の子は、チラリと横目で私を見た。

「この人はさ、俺の古い友人だよ。京都にいた頃の…。」

“友人”

大野さんのその言葉が、私の胸をじんわりとあたたかくした。

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