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桜並木を見おろして【ARS・O】

第1章 個展

「うるせー、お前ら絵を見に来たんだろ。とっとと見ろ。」

大野さんは、高校生の男の子のお尻を蹴った。

「暴力教師だ!」

蹴られた男の子は、笑って叫んだ。

「ごめんよ、こいつら俺の教え子。全員、この春に美大や芸大に進むんだ。」

大野さんは、眉を下げて苦笑しながら私に教えてくれた。

高校生の様子を見ているだけで、大野さんがどれほど教え子に慕われているのかが手に取るようにわかった。

今まで大騒ぎしていた高校生たちは、作品を鑑賞しだすと途端に静かになった。

真剣な眼差しで作品を眺めている。

美大時代の大野さんを思い出す、深い眼差しだった。

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