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桜並木を見おろして【ARS・O】

第10章 アトリエ

毎週日曜日、大野さんのアトリエに通った。

日曜日は、研究所の授業は夕方で終わる。

生徒が帰ってからの時間を利用して、公募展に向けてのスケッチが重ねられた。

10年前と違って、時間はたっぷりある。

スケッチが終わったあと、大野さんは決まってコーヒーを淹れてくれた。

コーヒーを飲みながら、話をした。

コーヒーを飲み終わるとすぐに帰った。

特別、ふたりの関係が発展することもなく、お友達として接した。

作品の下描きが終わると、アトリエには呼ばれなくなった。

それから、日曜日の夜は桜の湯飲みでコーヒーを飲んだ。

湯飲みにコーヒーなんて、タケシさんに知れたら怒られそうだけど。

そうしたい気分だったのだ。

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