テキストサイズ

桜並木を見おろして【ARS・O】

第12章 桜

公募展の展示が始まった。

日曜日の午後、大野さんと美術館で待ち合わせた。

私は、久しぶりに着物に袖を通した。

東京に来るとき、着物は持って来なかった。

まだ銀座のクラブで働いていた頃、リサイクルショップを見つけた。

今は着物ブームで、着物専門のリサイクルショップがあるのだ。

懐かしくなって、安いけど状態のいい粋な柄行きの着物を買った。

小物なども一揃え買った。

買ったものの、一度も来て外出をしたことはなかった。

着ていく場がなかったのだ。

ずっとしまいこんでいたその着物を着て、美術館に向かった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ