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桜並木を見おろして【ARS・O】

第12章 桜

展示室をいくつか抜けた。

「あれだよ。」

大野さんが指さしたのは…

桜吹雪の中、ストールを飛ばされた私の絵だった。

飛ばされたストールは、私の体のまわりを舞っている。

「これは、美大の屋上の…。」

「ん、そだよ。あん時の絵だよ。」

大野さんは、絵に目をやりながら答えた。

「俺と小春ちゃんが、あらためて友達になった、あの時だよ。」

あの時、突風が吹いて私のストールが飛ばされた。

大野さんはそれをひらりとキャッチすると、私の肩にかけて言ったんだ。

『あらためて、友達になってくんねぇか。』って。

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