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桜並木を見おろして【ARS・O】

第13章 これから

夜になって櫻井さんが来た。

「へー、とうとう小春さんは誰かのものになってしまうんですね。」

櫻井さんは、瓶ビールを自分で注ぎながら言った。

「そんなたいそうな…。お店はずっと続けるし、何も変わらへんよ。」

「さあ、どうかな。客の中には少なからずショックを受けている男もいるんじゃないですか。」

櫻井さんは、唇を片方だけ上げて上目遣いであやしく笑った。

店の引き戸が開いて、大野さんが入って来た。

「今日はまだ開いてたな。」

「智さん、仕事の帰り?」

櫻井さんは、私たちを交互に見上げた。

「ご本人登場って訳か…。」

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