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桜並木を見おろして【ARS・O】

第14章 エピローグ

「前の奥さんと住んでたマンションなんて、嫌じゃないんですか?」

閉店間際の店に滑り込んできた櫻井さんは言った。

「そうやね…。複雑な心境にはなるけどね。前の奥さんにも申し訳ない気持ちもあるし。」

あのマンションは、おそらく前の奥さんにとっても大野さんとの思い出がつまった場所で。

そこに私がずかずかと入り込んでいる状況は、我ながら面の皮が厚いと思う。

「大野は何て言ってるんですか?」

櫻井さんは、かしわの照り焼きにかぶりつきながら聞いた。

「店と研究所の間にいい物件があったら引っ越そうって。でも、なかなかいいところが見つからへんのや。」

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