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桜並木を見おろして【ARS・O】

第1章 個展

私は、画廊というところに来るのは初めてだ。

この画廊は、だいたい30畳くらいの広さだろうか。
四方の壁は白く、床は古い板張りだ。

その白い壁に、大小合わせて10点ほどの絵が飾られている。

大野さんの美大時代の専攻は日本画だ。

今も、日本画の作家として活動しているらしく、穏やかな色調の作品が展示されていた。

私は、作品を一点一点見てまわった。

鷺を描いた作品があった。

鷺の長い首が伸びやかな曲線で描かれていた。

「多摩川なんかには、まだまだ鷺がいるんだよ。」

振り向くと、大野さんが青い花を活けた花瓶を抱えていた。

青い花たちは、白いシャツの大野さんによく似合っていた。

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