テキストサイズ

桜並木を見おろして【ARS・O】

第4章 宴

「え…。」

私の顔から血の気がひいた。

私は、もう10年間一度も舞っていない。

それどころか、東京では芸妓であることを隠して生きてきた。

とても舞えない。

そう思った。

「小春姉さん、私も見てみたい!」

アッコさんも私にせがむ。

「無理言うなよ。小春さんの舞は、お座敷でしか見られないんだよ。高いんだよ?」

大野さんが、冗談混じりにふたりを制してくれた。

大野さんは日本画。

タケシさんは陶芸。

アッコさんは、空間造形を専攻したのち、陶芸の道に。

みんな、秀でた才能を持っている。

素晴らしい芸術家だ。

でも私は…?

私が自信を持ってるものは…。

「………。」

私は、黙って立ち上がった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ