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桜並木を見おろして【ARS・O】

第4章 宴

舞が終わった。

私は、膝をついて床に三つ指をついて礼をした。

三味線もない。

扇子もない。

着物どころか服はパンツ姿で、髪も結っていない。

こんな姿で、人前で舞うのは初めてだ。

着物と日本髪は芸妓の正装であり戦闘服だ。

あの姿だからこそ、皆は私を芸妓だと呼ぶ。

あの姿だからこそ、皆は私を見て喜ぶ。

今の私には、それがない。

着物を着ていない芸妓なんて、羽根のない孔雀のようなもの。

こんな姿で、舞ってよかったのだろうか。

不安に思って顔を上げた。

そこにあったのは…

満足気に微笑む、三人の顔だった。

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