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桜並木を見おろして【ARS・O】

第7章 桜月夜

「ちょ、ちょっと待って!」

後ろから大野さんの声が聞こえた。

ビールが入ったレジ袋を提げながら、大野さんが追いかけて来た。

大野さんは、私に追いつくと肩をつかんで止まらせた。

「はぁ、はぁ、小春さん、おいてかないでよ。俺、帰り道わからないよ…。」

大野さんは、息を切らしながら笑った。

大野さんは、私が走って逃げた訳は聞かなかった。

その代わり、私の震える手を握ってくれた。

手を握ったまま、歩き出した。

私がタケシさんの家とは反対方向に走ったので、遠回りして帰ることになった。

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