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桜並木を見おろして【ARS・O】

第7章 桜月夜

大野さんの手は、体のわりに大きくて。

長い指で私の手を取り、しっかりと握ってくれた。

優しい。

優しすぎる。

大野さんに女性が途絶えることがないというのがわかる。

大野さん自身は自然にしてるだけなのに、その空気が心地よくて。

つないでくれた手もおそらく特別な意味はなく。

私の不安定な気持ちを察して落ち着かせてくれてるだけで。

優しくされたら期待してしまう。

『智はフリーなら断らないみたいだよ。』

アッコさんの言葉がよみがえる。

でも、私は大野さんにいま恋人がいるかどうかも知らない。

私は、大野さんのことを何も知らない。

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