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桜並木を見おろして【ARS・O】

第7章 桜月夜

東京で食堂を始めて、今では常連客もついた。

細々ながら、何とか暮らしていける。

温かい料理を出して、お客さんがそれを美味しそうに食べて。

時々、ほんの時々、大野さんが食べに来てくれて。

それで充分なはずだ。

会えなかった、居どころもわからなかったあの10年を思えば、今は何て恵まれているのだろう。

何て幸せなんだろう。

でも、大野さんを追いかけて来たのは私の勝手で。

私が大野さんに気持ちを伝えることは、私の勝手な10年を大野さんにも背負わせることになる。

重すぎる。

そんなことは、絶対にできないと思った。

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