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桜並木を見おろして【ARS・O】

第7章 桜月夜

「わお…。」

大野さんが立ち止まった。

道沿いのお寺の塀の向こうに、大きな桜の木があった。

枝が塀を越えて道まで腕を伸ばしている。

一面に、淡い白の桜の花が咲いている。

「すげぇな…。」

大野さんが、ガードレールに腰かけた。

私も隣に腰かけた。

かなりな巨木で、背は近隣の住宅の屋根を越えている。

ああ、そうだ。
昔からこの木はあった。

大通りから少し入ったところにあるこのお寺のこの桜。

私が子供の頃から変わっていなかった。

大野さんは、ジャンパーのポケットから煙草を取り出すと、自分が風下であることを確認して火を点けた。

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