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桜並木を見おろして【ARS・O】

第7章 桜月夜

桜は、おぼろ月に照らされて白く浮かび上がっていた。

風が吹くたびザワザワと音を立てて揺れる。

大野さんは煙を吐きながら桜を見上げた。

私も、同じように桜を見上げた。

「俺さ、結婚してたんだよね…。」

大野さんがおもむろに話し出した。

「結婚…?」

私は、聞き返した。

大野さんは、眉間にシワを寄せて再び煙草を深く吸い込んだ。

ふうっ、と長い息と煙を吐いた。

「東京帰って、俺、結婚したんだよ。」

そう言う大野さんの横顔にはいつものゆるい雰囲気はなく、どこかピリッと尖っていた。

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