テキストサイズ

桜並木を見おろして【ARS・O】

第7章 桜月夜

「東京帰って研究所で働き出して、二年くらいたった時かな。研究所の絵画教室に通うOLさんが、俺のこと好きだって…。」

大野さんが話始めたのは、私が知らない10年のことだった。

「俺、その時彼女いなかったから、誘われるままに付き合い出したんだ。」

大野さんは小さい灰皿を出すと、吸っていた煙草をもみ消した。

「しばらく付き合ってたら“結婚しよう”って言われてさ。あまりに熱心に言うから、俺も“この人なら…”と思ったんだ。」

車のベッドライトが、大野さんを照らして通りすぎて行った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ