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桜並木を見おろして【ARS・O】

第8章 桜並木を見おろして

「わぁっ…。」

フェンスの向こうに見えたものは、嵐山から続く桜並木。

嵐山から松尾まで、桂川沿いにずっと続く。

「きれい…。」

「だろ?」

大野さんが眉を下げて少年のように笑う。

10年前、最後に大野さんと会ったのはこの屋上。

大野さんは、『ここから見える桜並木がきれいなんだ』と教えてくれた。

私は『見てみたい』と言ったが、大野さんは3月の卒業式のあと東京に帰るから無理だと言った。

一生見ることはないと思った景色を、いま、大野さんと見ている。

「これを見せたかったから、京都に誘ったんだよ…。」

大野さんは、桜並木を見下ろしながら言った。

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