
先生…お願い。早く治して・・・
第55章 平気なわけがないだろ!でも俺は医者だから…
少しすると診察室の扉が開き、
“ありがとうございました。”
という声と共に、中から綺麗な女性が出てきた…
追いかける様に
“お大事に〜”
と柔らかな高梨先生の声も聞こえたが、その扉はそのまま閉まった…
少しするとまた扉が開き、高梨先生が顔を出した。
次の患者さんを呼ぶ為に、手にはカルテらしき物を握っていた。先生はその名前を呼ぼうとしたが、石川先生と私に気がついた様だ…
高梨先生は患者さんの名前を呼ぶのを止め、下を向いたまま肩を震わせ泣いている私の側にやって来た。
高梨先生は私の前でしゃがみ、頭に手を置くと、
“ 綾〜どうした?顔上げて?…もう泣いてんの?ん?すぐ終わるから、そのまま隣の1番の治療室に入って!チャチャッと終わらせちゃおう!ねっ。”
高梨先生はニコっと微笑む…
『…やっぱりヤダッ…う"っ…う"っ…やりたくない』
「“ 大丈夫すぐ終わるから”」
まるでハモる様に石川先生と高梨先生は同じ事を言う
『う"っ…う"ぇっ…』
産婦人科の前で、高校生位の私が泣いてなだめられていたから、待っている患者さんには好奇の目で見られていたかもしれないが、私にはそんな周りの事まで考えている余裕すらなかった…
「綾…ほら行くよ!高も忙しいんだから…。ねっ」
足がすくんだが、石川先生に背中を押され治療室へ入った…
石川先生は高梨先生がいる診察室の方へと入っていった
