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第5章 真昼の怪異

バーチャルの世界だと思っていたものが、リアルに完全に結びついてしまうのだから。

「嫌だ!見たくない!俺は知らない!」

「いいから見ろ!じゃなきゃ名前と年齢だけでも教えろ!」

「覚えてないっ!」

「んなわけあるかっ!目を逸らすな!お前がバーチャルだと思っていた世界はリアルなんだ!全部お前が悪い訳じゃない。悪いのはシステムを作った奴だ」

そうだ。

だって俺達には知らされて居なかったじゃないか!

本物の人間だって事を!

確かに放置した鈴木も悪い。

けど、本物の人間が死んでしまうなんて聞いてない。

知っていたら、奴だって考えた筈だ。

もし死んでしまった彼女達が恨んでいるとするならば、それは鈴木ではなく運営事務局の制作側を恨むべきなんだ。

「おい!鈴木!出るぞ!」

「出るって?」

「恋奈の学校だ。恋奈なら何か知ってるかも知れない」

俺は鈴木を着替えさせると、急いで恋奈の学校に向かう。

道中で学校を抜け出して会えないかとメールを送った。

直ぐに返事が来る。


アイツ…。

授業中なのに直ぐに返事を返して来たりして…。

本当にカワイイ奴だなっ!


恋奈の返信は、『お昼に学校を抜け出すからそのままデートしよ♥』

なんて書かれていた。

そのメールに俺の顔は崩壊寸前だ。

鈴木が気味の悪い物を見るような目で俺をみているが、俺は気にしてない。

Love is strong!なのである。

俺達は昼休みに入り、学校を抜け出して来た恋奈と合流した。

近くのマックに入る。

俺はテリヤキバーガーセット、恋奈はフィッシュバーガーのセットを頼む。

鈴木は胃が受付ないと、アイスティーを注文した。

俺達はトレーを持ってテーブル席を何とか確保し、話始めた。

「恋奈は俺に言ったよな?あれは作りモンだって」

「うん。そう聞いてるよ?」

「でもな、こいつが放置してゲームオーバーさせた主婦、遺体で見つかったんだって…」

「えっ!?嘘でしょ!?だって声を掛けられた時、何も危ない事はないって…」

「恋奈はたまたま運が良かっただけなんだ。恋奈だってそうなっていたかも知れないんだ。自分がどんだけ危ない橋を渡っていたか、分かっただろう?」

「……」

恋奈は無言でコクンと頷いた。

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