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第8章 新しいバイト

何の足掛かりも掴めないまま、数日が過ぎた。

鈴木の様子は相変わらずだ。

それでも、俺が作った飯(大したものではないが)はきちんと食べてくれているようだ。

俺は気ばかり焦っていた。

そんな時だった。

いつも通るビルの看板が目に入った。

「宝井探偵事務所」

何故、そこに行こうと思ったのかは自分でも分からない。

でも、ほら、ドラマとかで殺人事件を解決したり、謎を解いたりしてるじゃん?

そんなイメージがあったからだと思う。

俺は藁にも縋る気持ちで、そのビルの中へと足を運ぶ。

その探偵事務所は、ビルの最上階───6階にあった。

エレベーターは無く、階段で6階まで上がるしかないらしい。

俺の若さなら、楽勝だろう。

そう思いながら階段を上ってみたが、結構な階段で膝にくる。

何とか上り切ると、閉ざされたくすんだ青色のスチールの扉が一枚、あった。

呼び鈴がない。

このまま開けて入っても良いものだろうか?

そんな事を考えていると、扉が開いた。

中から扉を開けたのは、やたら背の高い、すんげぇ美人なネェちゃんだった。

「ブッブー!!所長の外れ~!!」

「えっ!マジ?」

その美人のネェちゃんの後ろから、今度はやたら背の低い超イケメンが顔を覗かせた。

な、何だ?

「お客さんでしょ?中、入って」

背のちっさいイケメンがそう言うと、でかいネェちゃんが道を開けて通してくれる。

殺風景な事務所の中。

3台の事務机と椅子。

部屋の隅にあるミニキッチンと小さな冷蔵庫。

窓の桟に置かれている大小様々な青色の瓶。

黒い合皮張りのソファとテーブル。

壁には、書棚がありファイルが綺麗に並べられていた。

俺は、ソファを勧められたので、そこに座ると、ちっさいイケメンがガラガラと事務机の椅子をソファの前に引っ張ってきてそこに腰掛けた。

でかいネェちゃんはミニキッチンの前で何かしている。

どうやら茶を淹れてくれるらしい。

「んで?どんな用?つまらない依頼はお断りだよ?」

「つまらないかどうかは、分かりませんけど、変な依頼かもしれません」

「変な依頼?」

俺は、ゲームのアプリに纏わるこれまでの事をかいつまんで話した。

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