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第9章 バイト初日

新しいバイトが増えたその日、俺は恋奈に電話をし、事情を説明して翌日のデートをキャンセルしたいと伝えた。

恋奈は『えっ───!!何でアキちゃんがそこまでするの!?恋奈と鈴木さん、どっちが大事なの!?』と怒られた。

そりゃあ、勿論、恋奈の方が大事だけどさ。

人の命が懸かっているかも知れない。

そう思うと、何かせずには居られない。

「必ず恋奈の為に時間を作るから!だから明日はゴメン!」

俺がそう言うと、結局、恋奈は許してくれた。

俺だって恋奈に会いたい。

会って、くだらない事で笑いあったり、エッチしたり、恋奈の手料理が食べたいよ。

「全てが片付いたら、いっぱいデートしような!」

「う…ん」

俺が元気いっぱいになのに対して、恋奈は何だか歯切れが悪い。

「どうした?」

心配になり、そう尋ねると『何でもないよ!』と明るい声で返してくれる。

でも、何か気になる。

「恋奈、夜中ちょっと抜け出せる?」

「えっ?」

「やっぱ、ちょっとでもお前の顔が見たい。俺が我慢できそうにない」

「アキちゃん…」

「いつもの公園12時に待ってるからさ?」

俺は恋奈の家は知らないが、いつも待ち合わせている彼女の家の近くだという公園がある。

そこで彼女を待っていると伝えて電話を切った。

明日から、掛け持ちだしな。

やっぱり恋奈を補充しておかないとだな。

俺は一度、家に帰ってシャワーを浴びると、時間になるまでテレビを見ながらダラダラ過ごした。

夜のニュースを見ていた時だった。

テレビの画面に見覚えある少女の顔が写し出されていた。

「…っ!?」

それは、行方不明者の情報を公開しているサイトで見た少女の顔だった。

近県の山奥で、白骨化した状態で見つかった様である。

現在は死因を究明中。

アナウンサーが淡々とした口調でそう告げた。

これは、偶然なのか。

あのアプリの犠牲者なのか?

もし、そうだとして、あんな小さい子を調教しようとしたヤツが居たんだ。

そして、彼女を見殺しにした。

人の性癖にどうこう言う資格はないが、反吐が出る。

ああ、早く恋奈に会いたい。

会って癒されたい。

恋奈はマジ天使だ。

時計を見れば丁度良い時間。

俺は恋奈に会う為に、財布とスマホをポケットに突っ込んで、自転車で彼女の家の近所の公園まで急いだ。

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