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第9章 バイト初日

俺は公園の入口に自転車を止め、スマホを取り出し時間を確認した。

約束の時間まで、あと10分。

俺は逸る気持ちを抑えて、近くのベンチに腰を掛けて彼女を待った。

「うん?」

何だろう。

何だか視線を感じる。

まさかのDQNじゃねぇだろうなぁ?

絡まれたりしたらアウトだ。

俺は視線の主を探して、キョロキョロと辺りを見回したが、人影はおろか猫の子一匹居なかった。

それはそれでおかしいと、その時の俺は気付かずにいた。

(気のせいだろ。鈴木に感化されて過敏になってんのかなぁ…)

そんな事を思いながら、目ぼしい情報はないかと、ゲーム系のサイトを見て回る。

相変わらず情報はない。

新しいバイト先で、何か進展するのだろうか?

何か、不思議な人達だった。

恐らく、俺とそんなに年齢は違わない。

そんな若い兄ちゃんが所長の探偵事務所。

そもそも、探偵って儲かるもんなのかな?

親が金持ちで道楽でやってんのかな?

そんな事を考えながら、ボーっとしていると、軽い足跡が聞こえて来た。

「アキちゃん!」

公園の入口を見ると、薄手のパーカーを羽織った恋奈が、俺に向かって駆けて来るのが見えた。

「恋奈!」

俺達は、数日振りの再会にひしと抱き締め合う。

風呂上りなのか、恋奈の髪や項からシャンプーとボディソープの甘い香りが立ち上っている。

それだけで、俺の息子がおっきしようとしていた。

息子よ。

今日は我慢だ。

家に帰ったら遊んでやるから、今は我慢してくれ!

「アキちゃん、会いたかったよぉ~」

俺の胸元にぐりぐりと頬を擦り付け、甘えて来る恋奈。

ううっ!

相変わらず可愛いヤツめっ♥

「俺も!」

ギューッと恋奈を抱き締める。

スーハーと深呼吸をして、恋奈の匂いを胸いっぱい嗅ぐ。

ああ。

また息子が…。

「アキちゃん…。恋奈、我慢出来ないよ。鈴木さん、バイトなんでしょ?お家に居ないんでしょ?今から行っていい?」

「駄目だよ。明日学校だろ?」

「アキちゃんの家から行くよ」

「でも、朝起きて恋奈が居なかったら、お母さん吃驚するだろ?心配するだろ?」

「でもぉ…」

俺は、恋奈の肩に両手を置くと彼女の顔を覗き込んだ。

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