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第10章 所長のお祓い

そして呆けた顔をしている。

「もう、帰ってもいいぞ?あとはこっちで処分しておくから」

所長は鈴木にそう言ったが、鈴木の心はここにあらずだった。

「キミも今日は帰っていいよ」

「え?」

「彼を連れて帰ってやんな」

そう言うと所長は、鈴木を顎で指した。

正直、俺はどんな事を聞くのか、そして本当に霊が憑いていたのかが知りたかったのだが、『後で話してやるから』と所長に言われ、仕方なく鈴木を連れて事務所を出たのだった。

除霊とかお祓いとかってこんなモンなのかなぁ。

俺は、鈴木に肩を貸して階段を降りる。

「鈴木よ、気分はどうだ?」

「………」

鈴木は呆けたままである。

所長、まさか鈴木の魂まで抜いたんじゃないだろうな?

家まで肩を貸したまま歩くのも辛いので、俺は近くの喫茶店に入って、鈴木が戻って来るのを待つ事にした。

取り敢えずアイスコーヒーを二つ頼んで鈴木の様子を見守る。

俺の懸念は取り越し苦労だったみたいで、10分程で鈴木の心は戻ってきた。

「はぁ…」

鈴木はアイスコーヒーを一気に飲み干すと、溜息を一つ吐いた。

「気分はどうだ?」

俺はストローを咥えながら、鈴木に尋ねてみる。

「何か、身体が軽くなった気がする!」

そう言って笑う鈴木の顔には、血の気が戻って来ていた。

「俺、腹減ったから何か食っていい?」

「ああ、食え」

鈴木が自ら進んで何かを口にする等、ここ最近はなかった事だ。

本当に、祓われたんだろうなと俺は思った。

今頃、所長はハナさんと濃厚なキスをしているのだろうか…?

そんな事をふと考え、ちょっと覗いてみたくなった。

俺は、自分の分のアイスコーヒー代を置くと鈴木に先に帰るように告げ、事務所へこっそり戻る事にした。

あ、でも鍵開いてんのかなぁ…?


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