テキストサイズ

アプリ

第12章 対峙

「…………」

「…………」

テーブルを挟んで恋奈と所長が睨み合っている。

所長の横に座っているハナさんは、そんな事は気にも留めずにケーキに舌鼓を打っていた。

俺はと言えばハラハラしながら二人の顔を交互に見る事しか出来ないでいる。

何故こんな状況になってしまったのか。

そもそも、俺は所長とハナさんの二人に恋奈を引き合わせるだけの筈だった。

そこで恋奈の学校まで三人で赴き、校門から出てきた恋奈に所長達が声を掛ける事になっていた。

しかし、恋奈が俺と一緒でなければついて行かないと断った為、俺はこうして彼女に付き添っていると言う訳だ。

所長に惚れちゃったら…。

なんて心配は無用だったようで、恋奈は所長に対し、敵対心剥き出しだった。

でも、何でそこまで…。

俺はチラっとハナさんの方を伺い見るが、彼女は相変わらず呑気にケーキを頬張ってご機嫌な様子だ。

「ねぇ、アンタ食べないの?そんならあたしに頂戴?」

自分のケーキを食べ終えたハナさんが、未だ未着手の恋奈のケーキに狙いを定める。

恋奈は無言のまま、ハナさんの方にスッとケーキの皿を差し出すが、視線は所長を見据えたままだった。

「やっりぃ~♪」

段々、俺は心配になって来た。

眉間に皺を寄せてはいるが、遠目から見れば見つめ合って居る様に見えなくない。

否、睨み合っているのではなく、本当は見つめ合ってるんじゃないのか?

俺の手前、険しい顔をしているだけじゃないのか?

やがて観念した様に、所長は恋奈から視線を外すと溜息を漏らした。

「このままじゃ不味いのは分かってるんだよね?」

何の事だろう。

俺にはさっぱり分からない。

「………」

恋奈は黙ったまま俯いた。

「消滅はさせないから。唯、そのまま放って置く訳にはいかないよ?後、数週間もしたら、本物の悪霊になってしまう。そうしたら、”消滅”させるしかなくなる」

所長の『消滅』と言う言葉に反応して恋奈はハッとして顔を上げた。

「何の事なんです?」

俺は堪りかねて所長に尋ねてみる。

所長は恋奈を見て、『話してもいい?』と彼女に尋ねた。

所長は何を知っている?

今日、初めて会ったんじゃないのか?


ストーリーメニュー

TOPTOPへ